
2020
梛の木の下で
Echoes Beneath the Nagi Tree
和歌山市民図書館 壁画
(和歌山)
パネル、綿布、土、アクリル、他
21m×3.7m
協力:本願寺鷺森別院、北海道大学和歌山研究林、
森のちから
コミッション:カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)


和歌山市民図書館内に描かれた壁画作品。「梛の木の下で」は、和歌山市の民話「鷺の森の大木」をもとに構想された作品である。かつてこの地に存在したとされる巨大な梛の木の記憶を、空間として現代に呼び戻している。鷺ノ森を取材し、現地の土を作品に用いることで、土地の歴史や自然との結びつきを強調した。本作は読書の場に郷土の物語を重ね、世代を超えて記憶が継承される空間を 形成している。

和歌山市民図書館の空間に象徴的に立ち現れる「梛の木」は、和歌山市に伝わる民話「鷺の森の大木」を着想源として構想された作品である。伝承によれば、かつてこの地の近傍には、高さ数キロメートル、根の直径は約4キロメートルにも及ぶとされる巨大な梛の木が存在し、その影は淡路島の海にまで及んだと語られている。また、その枝葉には無数の白鷺が棲みついていたとされる。この大木は既に伐採されたと伝えられる一方で、その根は今なお地中深くに残り続けていると想像されている。本作品は、その見えない根から新たな芽が生え、葉を広げ、こどもたちとともに成長していくという物語的構造を空間化したものである。
本作を手がけた南条嘉毅は、土地固有の「土」を素材として用い、風景や場所性を主題とした制作を継続的に行ってきた作家である。本プロジェクトにおいても、民話を手がかりに和歌山市鷺ノ森を取材し、作品の一部に使用する土を現地から採取している。こうしたプロセスにより、過去の時間層と現在の場所が重ね合わされ、こどもとしょかんという日常的な公共空間に、郷土の自然や歴史、文化を想起させる場が形成された。来館者は読書を楽しむと同時に、この場所に身を置くことで、和歌山という土地に内在する記憶に静かに触れることとなる。
さらに、この象徴的な空間は、こどもの記憶に長く刻まれ、成長後に再訪した際にも語り継がれる契機となることが意図されている。やがて自らのこどもに民話の背景を語り、世代を超えて物語が継承されていく場となることを目指している。季節や時間帯によって異なる表情を見せる「梛の木」は、多層的な願いを内包しながら、今後もこの場所の象徴として存在し続けるだろう。
協力:本願寺鷺森別院、北海道大学和歌山研究林、森のちから、和歌山市





