
2017
南条嘉毅個展 " overlay −時層の風景− "
Solo Exhibition " overlay −Landscape of time layer− "
GALLERY TAGA2(東京)


京都での滞在制作を起点に生まれた8点の絵画作品を展示。目の前に広がる現在の風景と、地下に眠る歴史の痕跡とを静かに重ね合わせている。場所は固定された像としてではなく、複数の時間が折り重なる層として立ち現れる。土や素材そのものを含み込んだ画面は、都市に沈殿する記憶に触れながら、鑑賞者を時間の深層へとそっと導いていく。

めぐりあう時間ー南条嘉毅の「時層」シリーズ について (高松市美術館学芸員 牧野裕二)
月並みな言い方だが、南条嘉毅の絵画は見る者のこころを遠い地点へといざなう。それは、自然や街の姿を余白を大きく取りながら描く手法によるところが大きい、とひとまずは言える。心動かす風景に出会った際、私たちはそれを写真に撮って残そうとするが、大抵は上手くいかない。切り取られた写真の画面からは実際の風景のごく一部の魅力しか伝わってこないからだ。その点、実際の風景が構図的に大胆に編集されているにもかかわらず、現地で採集した土やアクリル絵具、墨等で丹念に描き出された南条の絵画は、空気や気配、あるいは風景に接した者の心に沸き起こる感覚といった、補足し難いものまで丁寧に表象することに成功している。だから私たちのこころは遠く離れた富士登山や伊勢詣での現場へと容易にワープさせられるのである。しかし、南条の絵画に特徴的なのは空間的な移動だけではない。時間的な移動も重要な要素となっている。南条はフィールドワーク的手法により、訪れた場所で見聞きし、調べたものを分析し、作品づくりに生かすが、その際に場の歴史、記憶がしっかりと画面の中に織り込まれる。そして私たちはその画面を通して、自然や人の営みが作り上げてきた、場所に息づく様々な時間の流れへと思いを至らせることになるのである。 近年の南条の絵画においては、まさに時間が主要なテーマとなっている。契機は2016年の京都におけるレジデンスで、南条は滞在制作した場所の足元に 1200年前の平安京の遺構が眠っていることにインスパイアされ、羅城門、朱雀門、大極殿といった平安京の建造物の往時の姿と現代のその場所を重ね合わせた連作を手がけたのであった。そのうち、黒澤明の映画「羅生門」に登場する朽ちはてた羅城門とその跡地に存在する公園の滑り台を重ねて描いた作品は幅3mを超える大作として制作された。今回の個展出品作はこれらに連なるもので、平安末期に建立された高さ80m超の八角九重塔とその跡地にある動物園の観覧車を組み合わせた作品をはじめ、尾形光琳の紅白梅図、歌川国貞の石川五右衛門図、洛中洛外図、を題材とした作品が出品されるという。9月にはパリでレジデンス制作及び発表があるとのことだが、歴史的事象には事欠かない東西の古の都を舞台に、古今の歴史がどのような巡り合わせを見せるのか、実に楽しみである。
2016年6月、GALLERY TAGA2での個展に寄せて






