
2019
南条嘉毅個展 " 透ける表層、漂う大地 "
Solo Exhibition " Transparent surface, wafting earth "
坂出市民美術館(香川)
塩田跡の土、製塩道具、映像、照明、他
造形サポート:カミイケタクヤ
協力:坂出市塩業資料館、坂出市立大橋記念図書館


坂出市民美術館で行われた個展「透ける表層、漂う大地」展では、坂出の土地に刻まれた時間と記憶を主題とする。現地で採取した土や塩、石英といった素材を用い、地層や製塩の歴史、洞窟壁画の起源を手がかりに、目に見えない時間の堆積を可視化する試みである。絵画は風景の再現ではなく、土地と人の営みを媒介する場として立ち上がり、静かに漂う時間の層を浮かび上がらせる。

「透ける表層、漂う大地」は、南条嘉毅が長年取り組んできた〈場所〉と〈時間〉の関係を、坂出という土地の歴史と物質性を通して再考する試みである。
第1室では、2000年以降継続しているフィールドワークを基盤とした絵画作品を展示する。現地で採取した土を絵画に用いることで、風景を視覚的に再現するのではなく、土地に蓄積された時間や記憶そのものを画面へと移行させる手法がとられている。熊野詣や街道、山岳信仰といった移動の経験が重ね合わされ、絵画は場所と身体の関係を媒介する装置として機能する。
第2室《透ける表層、漂う大地》では、坂出の製塩の歴史と地層の生成に着目する。地層は一メートル形成されるのに数千年を要するとされるが、本作ではその不可視の時間を、透過する層として可視化し、足元の大地に内在する記憶へと観者を導く。
第3室《海と塩をめぐる物語》では、塩の結晶を通して時間の物質化が提示される。塩は生活・信仰・交易と深く結びつき、結晶化という現象によって時間を内包する存在である。鍾乳石のように垂れ下がる塩の造形は、凝縮された時間そのものを象徴している。
第4室《cluster》では、洞窟壁画を絵画の起源として捉え、石英に直接描く試みがなされる。石英はクォーツ時計にも用いられる素材であり、現代における「正確な時間」の象徴である。太古の壁画と現代の時間装置を重ねることで、表現行為と時間意識の連続性が浮かび上がる。
本展は、土地に堆積した時間と人間の営みを往還しながら、絵画を「時間を内包する場」として再定義する試みであり、坂出という場所の記憶を現在へと接続する実践である。



















