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At the Forest’s Edge

2019

森の縁

At the Forest’s Edge

北海道大学和歌山研究林(和歌山)

木の根、川の水、民具、映像、

協力:北海道大学和歌山研究林

At the Forest’s Edge

森のちからX
本作は、川や海を循環する水の長い時間と、その源流域で林業や炭焼きによって営まれてきた森の記憶を主題とする。南条は、訪れた土地の土や砂、水を用い、場所に堆積した時間を可視化する制作を続けてきた。本作では、古座川下流域での水の循環体験と、北海道大学和歌山研究林での取材をもとに、親林館の空間を用いて、森と水が共有する時間の層に触れる場を構成している。

《森の縁》は、河川から海洋へと連なる水の循環を時間的基軸とし、その源流域において継続されてきた林業や炭焼きといった人間の営為を、空間的構成によって再編成するインスタレーション作品である。舞台となる北海道大学和歌山研究林は、自然環境の長期的変動と人為的介入の痕跡が重層的に蓄積された場であり、本作はその場所性を時間の層として読み替える試みとして位置づけられる。

親林館1階では、下流域において淡水と海水が混合する際に生じるシュリーレン現象を映像化し、水の循環過程に内在する不可視の境界と運動を可視化している。床面に設けられた起伏と砂の層、さらに天井から滴下する水は、時間経過に伴い微細な地形変化を生じさせ、作品全体を固定的な展示物ではなく、生成過程そのものとして成立させている。

2階では、現地調査によって収集された映像および音響資料を用い、源流域に沈殿する時間の感覚が提示される。ここで扱われるのは歴史的事象の再現ではなく、森という環境に内包された記憶の層であり、鑑賞者は視覚・聴覚を通じて非線形的な時間構造を経験する。

上下階を連続的に体験させる本作の構成は、地理的に分断された空間を水の循環という時間軸によって接続し、自然と人間の関係を固定的な対立構造ではなく、相互浸透的なプロセスとして再考させる。そこにおいて《森の縁》は、場所に蓄積された時間を空間化する実践として、環境と記憶をめぐる現代美術の方法論を示すものである。

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