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2016
土時計 / 小須戸×306号室
Soil Clock / GINZA OKUNO BUILDING ROOM 306 PROJECT
"KOSUDO × ROOM 306"
銀座奥野ビル306号室プロジェクト(東京)
土、ガラス、他
51×51×91mm、35×35×78mm
協力:黑多 弘文


《土時計》は、砂時計のかたちを借りながら、時間の流れそのものを問い直す作品である。内部には、その土地から採取した土で満たされ、上下を行き交うことはない。瓶の中で静止する土は、過去と未来を隔てる現在を示すと同時に、それらを連続させる存在でもある。外側からは見えにくいが、近づくことで土地固有の色が浮かび上がる。日常の時計が刻む均質な時間とは異なる、大地に蓄積された緩やかな時間が、思考と想像のあいだで静かに輪郭を結んでいく。

本プロジェクトは、銀座・奥野ビル306号室に残されていた「スダ美容室」という看板を起点に、ひとりの女性の生と、その周囲に広がっていた場所と事業の痕跡を辿るリサーチから始まった。須田美容室は、昭和初期に銀座で開業され、経営者であった須田芳子は、美容業に加え「スダ商会」として工業用油脂研磨剤を扱う事業にも関わっていたことが、名刺など限られた資料から浮かび上がる。銀座、目黒、さらには日産館や故郷・秋田県角館へと断片的に散在する住所情報をもとに、地図資料や現地調査、聞き取りを重ねたが、その全容は明らかにはならなかった。
しかし、調査の過程で見えてきたのは、確定的な歴史ではなく、都市に埋もれた個人の営みと、その不確かさ自体である。とりわけ角館で、長らく行方不明だった看板が遺品として大切に保管されていた事実は、306号室という場所が単なる空室ではなく、昭和から平成へと続いた生活の場であったことを強く示している。現在、失われた看板は写真として廊下に掲げられ、不在のまま存在し続けている。本プロジェクトは、物や場所に残る痕跡を通して、記録からこぼれ落ちた個人史と都市の時間を静かにすくい上げる試みである。
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