
2016
南条嘉毅個展 " Native Landscape "
Solo Exhibition "Native Landscape"
ART FRONT GALLERY(東京)
富士溶岩、エマージェンシーシート、双眼鏡、映像機器、他


本展では、富士塚を起点に、富士山という風景がどのように人々の記憶やイメージの中で形づくられてきたのかを探った。南条は制作にあたり実際に富士登山を行い、現地の体験や採取した土、写真資料をもとに作品を構成している。描かれた富士山と土地の物質が重なり合うことで、風景は固定された像ではなく、身体的な経験とともに立ち上がるものとして 提示される。

南条嘉毅の個展「Native Landscape」(2016)は、富士塚を主要な参照点とし、富士山という風景が生成され、共有されてきた歴史的・文化的プロセスを絵画とインスタレーションによって問い直す試みである。南条は制作に先立ち実際に富士登山を行い、山を身体的に経験すると同時に、写真撮影や土の採取を通して、場所に蓄積された情報を収集した。
作品は、描画された絵具の層と、現地の土という粒子的な物質から構成される。土は単なる素材ではなく、描かれた風景の空間性を暗示する要素として画面に定着し、平面的なイメージと物質的な痕跡とのあいだに緊張関係を生み出している。この構造によって、絵画は再現的な風景画に留まらず、場所そのものを想起させる装置として機能する。
富士山は、北斎や鉄斎に代表される美術史的表象に加え、富士講や富士塚といった山岳信仰、さらには観光やメディアを通じて、多様なイメージを生成・受容されてきた風景である。南条は、こうした富士山表象の重なりに着目し、誰もが知るイメージと個人的な登山体験を交差させることで、風景のリアリティがどのように立ち上がるのかを可視ならぬかたちで示す。本展は、富士山というモチーフを通じて、風景が身体的経験と文化的記憶の往還の中で生成される過程を提示している。
「ノルウェーを描く」
今回展示されている新作は、昨夏にノルウェーで南条が行ったアーティスト・イン・レジデンスが基となっています。約1か月間、ノルウェー北部の街ボードーに滞在し、フィヨルドの海岸や郊外の山水、落ち着いた街並みなどを取材して滞在中や帰国後に描いたものです。
少しもやがかかったような北欧の空をバックにくっきりとシルエットを見せる大聖堂の尖塔。第二次世界大戦で焼けた後に再建された聖堂のファサードは画面の外に隠されており、生き残りの象徴のような鐘楼だけが夕暮れの鐘の音を響かせています。
こちらは散策の途中で偶然出会ったという湖と山のある風景。日本では出会うことのなかったパノラミックで「映画のような」シーンに素直に驚いたといいます。場所性にこだわる作家は、その場で採取した土を持ち帰ってきました。これを乾かし、ふるいにかけて、顔料並みの粒子に精製したものをメディウムに混ぜて塗ります。同じノルウェーの土でも一様の濃淡ではなく、それぞれの作品に微妙な差異が生まれてきます。
これまで富士登山や伊勢詣などいわゆる名所と呼ばれる土地に出かけていっては描き続けてきた南条。江戸期から現代に至る日本人独特の風景観がある種の宗教的な意味合いを帯びていったのではないか?と問いかけています。そこには見えるものを描くだけの風景画ではない作家の姿勢が垣間見えます。そうした視点で改めてノルウェーでの新作を見回すと、地元の人にとって近い存在の山、湖、街並みが少し違ってみえてくるかもしれません。























